大腸ガンで入院中だよ【その2】手術室に入るの巻

大腸がんの手術

入院した8月28日は、午前中に超音波検査をして、午後は栄養補給の点滴をうつためのルートを喉にあけました。術後は食事が1週間近くできなくなるそうなので、栄養を高カロリー点滴で毎日補給するのです。

病院の夕食

手術前も、腸を空っぽにしなければならないため食事はこの夕食が最後でした。病院の食事は薄味ヘルシーでおいしかったですよ。カロリー計算もきちんとされているはずだし、夕食は毎日ここに食べにきてもいいと思ったくらい。

入院2日目は、下剤を飲んで腸を空っぽにします。前回も書きましたが、意外にすんなり腸内が空っぽになって清々ししいです。その後は水も飲めません。することもないから、持ちこんだ本を読むか、スマホでYouTubeを見ています。BS PrimeNews 小泉悠 【徹底分析】プリゴジン事件 生前の声とか、朝ドラのらんまんとか、家で見ているテレビ番組を見てますな。

オペの日の朝

入院3日目、8月30日午後2時半、病室で待っていたぼくのところへ看護婦が呼びに来るのかと思っていたら、執刀医が一人で歩いていらして「有賀さん、手術が始まります、お待たせしてすみません」と声をかけてくださいました。意外にきさくな病院です。

ぼくは点滴のスタンドを自分で押しながら、先生の後をついていきました。のほほんと歩いているぼくを見て「有賀さん、ぜんぜん緊張してませんね」と先生も意外そうにおっしゃいます。ふつうは手術前は少しこわばった顔をする人が多いそうです。「大丈夫だと思っていますから」と答えたら、少しはにかんだ顔をされていました。

エレベータを降りて、手術室の前で、待っていた妻と再会します。コロナ対策のため病室まで見舞いに来られないので、ずっとここで一人で待っていてくれたのです。「じゃ、行ってくるねー」とハイタッチして、3重の扉をひとつずつ越えました。

大腸がんの手術

手術室に入るのは初めてです。

中央に置かれた外科の手術用ベッドは狭く、幅50cmしかありません。ゆっくり寝られる場所ではありませんが、たしかに狭くないと手術をする手が患部に届かないですよねえ。そのまわりには、これまで見たことがなかった赤紫色のナース服を着た女性が2人、白衣の医師が2人、ほかに看護婦が何人かすでにいて、おのおの準備をしていたり、ぼくに挨拶をしたり。こんなに大勢の方々が手術をしてくださるのかとちょっと感激しました。

赤紫色のナース服の女性の一人がぼくに顔を近づけて、熱い目で手術の説明を始めます。彼女の顔はぼくの顔のすぐ前にあります。これまでの人生で"カノジョ"以外にこんなに顔を近づけた女性はいないという一線を超えた距離で、ドキッとしますが、そこは手術室なので冷静に。しかしなぜ彼女はこんなに近距離で話すのだろう?もちろん悪い気はしないというか嬉しいくらいですが、喜んでいる場合でもなく、指示にしたがってベッドに向かいました。

手術台に載る

ベッドに寝たぼくの上に、円形の高演色LEDがいくつもついた医療用大型照明が覆い被さって、いかにも手術っぽい雰囲気抜群です。プロの空間、プロの医療関係者たち、しびれます。とくに完全に無影状態にするための照明には、フォトグラファーとしてはなんだかグッときますね。これで無影撮影したら楽しそうだなあ、などと考えているぼくの右側に、麻酔医が立ちました。麻酔医の方の指示に従って横を向き、また上を向き、少しして徐々に麻酔が効いてきます。

そして、気がついたときには病室のベッドの上に戻っていました。完全麻酔なので、手術の様子はまったく分かりませんでした。

手術は5時過ぎに無事に終わったようですが、ぼくが病室で気がついたのは午後7時に近くでした。あとで聞いたのですが、手術室を出る時にぼくは妻氏にピースサインを送ったそうですが、残念ながら覚えていません。

切除した部分は盲腸の約15cmほど。それに小腸の一部。
これを聞いて「盲腸ならなくてもいいんじゃないの」という人もいますが、近年の研究では盲腸はリンパ組織が大切な粘膜免疫を産生していることが判明し、必要ないものではないことがわかったので、ちょっと残念でした。とはいえ命がなくなるよりはずっとマシです。

眠れない夜

そのまま、朦朧としながら寝て起きてを繰り返し、深夜2時ごろになってはっきりと目が覚めてきました。しかし、こんな時間に起きていてもすることがありません。なによりぼくの体には心電図ほかいろんな計器やら痛み止めや諸々の点滴がいくつもぶら下がっていて、体を動かす余地がありません。

痛み止めがよく効いていて、痛みはまったく感じません。

眠る以外することはないのですが、すでにたっぷり眠ったから眠くならず、ベッドの上で眠れない夜を過ごしました。しばらくして、朦朧としてる時間も少しはあったように思います。

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