【ブンガマティ】倒壊した自宅の前で笑顔を絶やさないネパール人

ネパール

今日は、パタン南方10kmにある町ブンガマティへ。カトマンドゥ盆地内では震災の被害が特に大きい町として知られている。

ブンガマティは町の中心にラト マッチェンドラナートという大きな仏教寺院がある。マッチェンドラナートとは観音さまのこと。12年に一度、ご本尊の観音さまが寺院から出されて山車に載せられ、パタン市内を巡る祭りがあり、今年はその巡行の年にあたる。

車がブンガマティに近づくと、道の真ん中で止まっているのが観音さまの載る山車が見えてきた。昨日の記事の最後に登場した小型版と違い、大きくて迫力がある

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本尊が出発して3日目、わずか1km進んだところで震災があったため、以来その日の位置で山車は止まったまま。いずれ巡行は再開されるはずだが、いつになるかはまだ決まっていないという。

止まったままの山車に礼拝する人々。

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山々を背景にするブンガマティ。
この町は、大型旅客機がカトマンドゥ空港に着陸するときにいつも右側に見える。ぼくも何度上空から見たかしれない。

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町に入ると共に、倒壊した建物が見えてきた。

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人の良さそうなおじさんが、手招きしてくれたので家に入った。この家は居住不適格とされ、住むことが出来ないという。

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そこで、家の裏庭に仮設の住処が作られていた。

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この仮設住宅(?)は通称「トンネルハウス」と呼ばれ、カトマンドゥ大学建築学部の学生がボランティアで造ったものだ。細く切った竹を骨組みにトタンを掛けただけの簡単なものだが、広々としているし、少ない費用のわりによく出来ている。さすが建築学部の学生たちの作品だ。昨日だけで10戸が建てられたという。

一方、こちらはカトマンドゥ大学美術学部の学生がつくった仮設住宅。

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細部の作りまでよく配慮された、土壁の素朴な質感が感じいい住宅だった。しかし、実用的には狭くて数人が入っただけで息苦しくなりそうだ。美大生のつくるものは見た目のクオリティは高いが、居住性はイマイチのような気がする。

カトマンドゥ大学からはボランティアの学生がたくさん来ていた。

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学生たちが首から下げているカードがこれ

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WE WILL RISE と書かれた札が素敵です。
頑張ろうね!

女子大生が子供たちに紙細工の作り方を教えている。

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震災後、子供たちは精神的に不安定になっていて、無闇になにかを怖がっていることが多いため、こうして優しいお姉さんたちが一緒に遊んでいるのだった。このあたりでボランティアをしている女子大生は、みな美人で賢そうな容姿をしている。きっと優秀な人たちなのだろう。

逆境にも微笑む人たち

壊れた自宅の前にテントを張って暮らしている老婆。

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カメラを向けたら、嬉しそうに微笑んでくださいました。

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これはネパール人のいいところだと思うのだが、逆境にあっても案外明るい顔をしている人が多い。あっけらかんとしているというか、状況を取り乱さずに受け入れる力がある。ブンガマティで会った人たちはニコニコしていることが多かった。

けれどもテントは、米袋をつなぎ合わせただけの簡単な作りで、中に入ったらかなり蒸し暑かった。地面にビニールシートを広げてあるものの、昨夜の豪雨には何の役にも立たずに水浸しになってしまったという。

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テントの中で、夫婦で昼食の用意をしていた。
ネワール伝統の包丁で野菜を刻み、カレーを作っている。

その老夫婦の壊れた家。
屋根の上で息子たちが無言で解体作業を進めていた。

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村の道は瓦礫で覆われている。

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布団を運ぶ女性

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ラト マチェンドラナート寺院は崩壊していた。
ご本尊が山車に乗って外にあったため、被害に遭わなかったのは不幸中の幸いとされる。

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寺院境内では軍隊や警察が瓦礫の撤去作業を進めていた。

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崩壊した自宅の上に立つ、木彫職人のディネシュさん。

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震災時は自宅作業場にいて、異常なユレを感じて窓から飛び出したのだそうだ。その直後に自宅が音を立てて倒壊した。一瞬の判断が命を救ったのだ。
ブンガマティを案内してくれたのは彼だったのだが、ぼくと一緒にいる間、ディネシュさんはいつもはにかんだような笑顔をしていた。ネパール人の気力は凄いものだと感心した。

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アップで写真を撮るときも穏やかな笑顔でした。
YOU WILL RISE!

ブンガマティは伝統的に木調が盛んで、ネパールで見られる飾り窓などの木調芸術の多くはこの町の職人が作っている。今日は自宅兼作業場が倒壊した職人たちが集まって、今後のことを話し合っていた。

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ディネシュさんは、昨日から仕事を再開するつもりだったのだが、精神的に落ち込んでいて全く仕事が手につかなかったという。顔は笑顔でいても、心は泣いているのかもしれない。

ところで、日本人は「こんな時にネパール人に仕事を依頼したら迷惑になるから頼まない」という思考を持ちがちだがそれは逆で、こんな時だからこそネパール人に仕事を頼んでほしい(それができる立場の人は)。仕事があれば収入になるし、家の再建にも繋がる。精神的につらくても仕事に没頭すれば気が紛れるのだ。

3人がかりでのべ一年掛けて彫ったバイラブ神。

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一本の木から掘り出した大作なのに、震災時に台から落ちてバイラブ神の鼻が欠けてしまったことを大変気にしていた。

バイラブ神の頭の上には阿閦如来像が彫られている。

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Posted by ariga masahiro