無数の悪霊が集まり、去っていくバリ島の夜【オゴオゴ】

バリ島

3月6日は、バリ島のサカ暦で大晦日にあたる。

新しい年を迎えるために、バリ島では準備が進められていた。

デンパサールのベテラン通り

この日は、バリの人々が造った巨大人形オゴオゴが路上に姿を現すのだった。

オゴオゴ渋滞

ここはデンパサールの目抜き通りのひとつ、ベテラン通り。

普段から通勤渋滞がある大通りだが、この日は「オゴオゴ渋滞」をしていた。道路に現れたオゴオゴを見るために車もバイクも速度を落とし、運転手がスマホで写真を撮ったりしているから、どんどん道が詰まっていく。

オゴオゴは、この世の悪いもの、悪霊・魔物・怨霊・妖怪を形にした巨大ハリボテのこと。バリ人はオゴオゴを使って魔物を追いはらう一連の儀式を完成させて清々しい新年を迎える。日本でいえば節分と大晦日が一緒になったような日だろうか。

まずはムチャルー。お浄めの儀式で、先日に海岸でおこなわれた「神々のお清め」に次いで「町のお清め」をする。町のあちこちにいる魔物を祓うのだ。

ベテラン通りを歩いたら、そこかしこでムチャルーをしていた。

オゴオゴの日のムラスティ

町にいる魔物を祓い終えたら、次は家に戻って「住まいのお清め」をする。バリ人は新年を迎えるにあたって、徹底的にあらゆるものを浄めるのだ。

そしてオゴオゴが大集合

夕方に雨がパラついたからか、オゴオゴの移送が始まったのは午後7時をまわって、空はすっかり日が落ちていた。

人々の熱気に乗ってオゴオゴが集まってくる。

オゴオゴが始まるオリンパス12mm/F2

今夜は新月の前の暗月で、夜は月が見えず真っ暗闇になる夜だ。闇夜からオゴオゴが姿を現すシーンはなかなか凄い。いまの日本語では新月と暗月を分けないから、一瞬分かりにくいかもしれないが、月が完全にみえない状態を暗月という。

デンパサール各地から、ベテラン通りの交差点に立つチャトルムカ像をめがけて、北と西からオゴオゴが集まってきた。"チャトルムカ"とは4つの顔を持った神さま(ブラフマ)のこと。日本でいう"四面道交差点"みたいな感じかな。

チャトルムカ像のまわりを回ったら、そのまま南のウダヤナ通りへ抜けてしばらく進んでから帰途につくコースになってるようだ。

オゴオゴオリンパス12mm/F2

この世の悪をあつめたオゴオゴは見るからに怖ろしげ。

恐怖のオゴオゴオリンパス12mm/F2

カメラはPanasonic G9を2台。レンズは単焦点レンズを4本、Olympus 12mm/F2、Panasonic 20mm/F1.7、Panasonic Leica 25mm/F1.4、Olympus 45mm/F1.8を着けかえながら撮影した。感度はほとんどISO1600だよ。

音と光の移動ガムラン

激しい音をジャンジャン鳴らしながら移動ガムラン隊がついていく。魔物は騒々しい音を嫌うので、できるだけ大きな音で音を立てていく。その音楽がまたステキ。

移動ガムラン隊Leica 25mm/F1.4

動画で撮影したので見てください。広場の迫力のある様子。

ものすごい人出で、夏の新宿駅の山手線ホームから通勤時間帯の外回り電車に乗るような混雑ぶり。みんな汗びっしょり。ぼくの肩から下げているカメラのレンズ表面にはいつの間にか若者たちの汗がついていた。お陰で照明の光が滲んで、熱気と雰囲気のある写真が撮れた。

G71オリンパス12mm/F2

オゴオゴを担いでいるのは20代の若者が多い。これだけ大きな御輿を何時間も持ち続けるのだから、若者でないとできないだろう。

単にかついで歩くだけでなく、魔物の方向感覚を狂わせるためにオゴオゴをぐるぐると回したり、走り回ったりする。そのたびに汗が散り、かけ声が響いてくる。

バリの儀式は音楽とセットだから、臨場感は動画で味わえる。

最後は壊されるオゴオゴ

子供たちも小さなオゴオゴを担いでいる。とっても可愛らしい。

子供たちもオゴオゴを運ぶ

オゴオゴを担ぐのはほとんどが20代を中心とした男たちだが、子供たちが参加するグループもときおり通り過ぎていった。。バリ人は伝統を次世代に受けつがせることに熱心で、こうして夜遅くまでいろんな儀式に参加している子供たちをよく見かける。踊りや演奏をする子供も多い。

オゴオゴはパレードを終えたら壊されて海や川に流されるのだが、なかにはチャトルムカ像の下で、自分たちが担いでいるオゴオゴを地面にたたきつけて壊す高揚した若者たちもいた。

最後はオゴオゴを破壊する

昨今は環境意識の高まりで、海に流さないケースもあるので、一番のハレの場所でオゴオゴを壊してしまうことに美学を感じているのかもしれない。

出店や屋台も多く出店していて、深夜1時を過ぎてもまだサテ屋はうちわをバタバタさせている。トウモロコシ店も多かったなあ。オゴオゴはまだまだ続く。

サテの屋台Leica 25mm/F1.4

最後のオゴオゴがチャトルムカ像を後にしたのは2時20分頃だった。それまで熱気に包まれていた四方の道は、あっという間に誰もいなくなり、暗闇と静寂の時が迫ってきた。

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