すしざんまいの社長がソマリア沖海賊を壊滅させた? テレビもネットもガセ情報が氾濫中。自分で真実を見分けよう

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フェイスブックに感動的な記事が流れてきた。低レベルな記事とパクリが多いNAVERまとめだ。画像ショットを載せるけどリンクは張らないことにする(パクリ記事にアクセスしてほしくないから)。

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話の内容をかいつまむと「すしざんまいの社長さんが、ソマリア沖の海賊に漁を教えて販路をひらき生活の糧をつくることで、海賊が悪事をやめた。年間300件もあった海賊事件がゼロになった。すばらしい!」
というもの。

NAVERのパクリ記事の元になった、すしざんまいの社長さんのインタビューの元記事はこれかな。ハーバービジネスオンラインの1月18日の記事「すしざんまい社長が語る「築地市場移転問題」と「ソマリア海賊問題」。

これが事実ならすばらしい。元記事を読むとミダシに「すしざんまいが年間300件の海賊被害をゼロに」と書いてあるけれど、本文のトーンはだいぶ違う。社長さんは海賊の更生のために活動している主旨のことは語ってはいても「私が海賊をゼロにした」と明言していない。

どうもハーバービジネスオンラインの編集者が勇み足で大げさな見出しをつけ、それを鵜呑みにしたネット読者がさっそく拡散したようにみえる。

海賊を退治したのは誰か

ソマリア沖の海賊が世界的な問題になったのは2007〜8年頃だったと思う。2009〜2011年には年間180件を超える海賊事件が起きた。

海賊はもともとソマリア内戦を闘った軍人くずれが多く、武装していて民間輸送船や警察機構ではたちうちできない。そこで多国籍軍が組織され、インド軍・ロシア軍・中国人民解放軍・アメリカ軍そのほか世界各国の海軍がやってきて海賊退治を始めた。さすがに正規軍の攻撃にはたちうちできず、急速に海賊は減っていった。

その結果、2013年には海賊がほぼゼロになった。

ソマリア沖海賊を根絶したのは、多国籍軍の活躍によるものだ。
そして日本の自衛隊もソマリア沖に展開して、民間輸送船を守っていた。

自衛隊に守られるピースボート

2009年には、ピースボートが海上自衛隊に護衛されてソマリア沖を安全に航行したのは有名な話だ。

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上の写真は、撮影者が「自由に使ってください」とされていたので転載した。
ピースボートを守っているのは護衛艦さみだれ。

この時の様子をピースボートの乗客がブログに書いている。動揺する乗客たちに
運営側が「皆さん、安心してください。自衛隊が守ってくれます。」と説明をしたことで、一同は安心し自衛隊に感謝していたことが記されていて、たいへん興味深い。

武装して襲ってくる相手に対して憲法第9条で対抗するのは無理なことをピースボートの乗客たちも理解されたようで、有意義な旅になったようだ。

しかしCNNによれば、2015年11月にふたたび海賊があらわれイランやタイの漁船を攻撃したそうだ。多国籍軍の監視がゆるくなったことと、スマトラ沖海賊が激増して国際社会の注意がインドネシア方面へ移ったことによって、海賊が活動しやすくなっている。軍の力によるつかの間の平和がいつまで保たれるか、予断は許さない。

発信者と受信者の質が低下している

20世紀まではネットがなかったから、報道に携わる者はある程度の教養があり、訓練を受けているものとされていた。朝日新聞の慰安婦捏造記事のようなどうしようもない記事を書く記者がいたとしても、報道機関への信頼感はかなり篤かった。

それがネット社会の現在では、だれでも記事を書くことができるようになった。

とてつもなく安い歩合制報酬でNAVERにまとめ記事を書いている人や、1記事数百円でキューレーションサイトに記事を書いている安物ライターは、教養もなければ技術もない。訓練を積める環境も売上もない。資金不足なのか興味がないのか、下手をするとパソコンを持っておらず、情報源はスマホでバイラルメディアの記事をそのままパクったり、ソーシャルメディアの友だちとの会話をシェアしているだけだ。

すしざんまいの社長の活躍は大変素晴らしい。
ぼくは尊敬します。このような方々のお陰で世界は少しずつよくなっていくことと思う。けれどもその一方で、わざと大げさなミダシをつけて記事を飛ばす安物ライターが増えることで、情報世界はますます混沌としていく。

「なにかおかしい」と思ったら自分でウラをとらないと、偽物の情報に流されてしまう。しかし毎度ウラをとる時間もない。真実はますます分からない、あぶない世の中になってしまった。

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追記:ソマリア第一人者の意見

「すしざんまいの社長がひとりでソマリア沖海賊を退治した」という話題に関しては、ソマリアに詳しいノンフィクション作家の高野秀行さんが自身のブログで以下のように明確に否定されている。

海賊の激減とすしざんまいには何も関係はない。たとえすしざんまいで元海賊を漁師や船乗りに雇っても、他の人間が海賊をやるから同じことだ

ということであった。
この件はこれで終了だ。もちろん、すしざんまいの社長の現地貢献は素晴らしいことだ。拉致・誘拐が普通に行われる国へ行って、拉致されずに仕事ができること自体が武勇伝だと高野さんも書いている。

ハーバービジネスオンラインさんは、社長の武勇伝をそのまま書けばよかったのに、ミダシが大げさすぎて内容を少し損ねてしまった。

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