いい写真は、カメラの性能が10%、事前の準備が90%で撮れるのだ。

景色がいちばん美しく見える瞬間は長く続かない。ベストのシャッターチャンスは1日のうち10分ぐらいしかない。

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このサグラダファミリアの写真は、4年前の7月21日午前9時18分に撮影した。ぼくのフォトbookの表紙にするつもりで構図を構想し、天気にも恵まれて深い青色が印象的な写真が撮れた。カメラはSONY NEX-6、レンズは10-18mm F4 OSSだ。

サグラダファミリアがもっとも印象的な姿は、4本の尖塔がそびえ「生誕の門」とよばれるこの翼廊北東側の眺めだろう。手前のガウディ公園の池からみると、生誕の門が水面に映って聖堂がもっとも荘厳に見える。

北東を向く生誕の門

バルセロナの新市街は道路が碁盤の目に敷かれている。しかしその道路は東西南北に対して45度の斜めに走っている。このディアゴナリー(斜め)な道路の方向のおかげでバルセロナは方向感覚が迷いやすいのだ。

サグラダファミリアの生誕の門は、この地図をみればわかるように北東に向いている。ということは太陽の光が当たる時間が非常に限られるということだ。

なんとしても美しいイメージ通りの生誕の門の写真を撮らなければ、と決意したぼくは、太陽の動きから7月なら午前9時半ごろに現地に立つのが適当だろうと見当をつけて地下鉄L5線に乗った。

到着時はやや薄曇りだった

地下鉄サグラダファミリア駅で列車から降りたのは午前9時より少し前。
しかし、何ということだろう。時刻はちょうどいい筈だが、空には薄く雲がかかって霞んでいるし、肝心の聖堂にも光が当たっておらずもさっとした印象だ。

こんな感じ。

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まあまあな写真は撮れたが、表紙に使えるほどのパワーは感じられない。

街頭写真家はお天気頼みの商売だ。事前のイメージと行動力が80%とはいったものの、実は天佑が大切なのだ。しかしぼくはハズレのない晴れ男。後のことは神仏におまかせしてカメラを構えてじっと待っていると、午前9時を過ぎた頃から太陽が差しこみ、同時に空の青色にも深みが出てきた。

やったね。
そうして、表紙になった写真が撮れたのは午前9時18分のことだ。

空はますます青く、かすかに写る雲もちょうどいい具合。
雲がこれより多いと空が白く見えるし、少ないとただ青いだけの平坦な空になってしまう。

軽いカメラで、手持ちで理想的な写真が撮れた。

これよりも20分後になると太陽が南側に移動して、生誕の門に光が当たらなくなる。この写真が撮れるのは一日のうち朝の短い時間だけなのだ。

というわけで、風景写真といえども構図と狙いをよく検討して挑むのである。太陽の方向はとくに重要だから、フォトグラファーは太陽の向きにあわせて1日のスケジュールを組むのだ。けっして、気のむくままに散歩しながらパシャッとお気楽に撮っているわけではないのだ。

それから、イメージ通りになるようにRAWファイルの調子を整えてJPEGファイルにしている。撮って出しということは滅多にない。「撮って出し」はイメージを持たないで適当にシャッターボタンを押している人がすることで、フォトグラファーはそういうことはしない。