Sony NEX-6 の インプレッション

撮影機材

デザインと操作性

外観はよくできていると思う。
右手でグリップを握った感じは、バランスよく持ちやすい。グリップの形状がよく、ラバーの質感もしっとりしている。
カメラが小さいのはよいことだ。しかし、カメラには操作しやすい最低限の大きさがあって、NEXシリーズはそれを下回るコンパクトさかもしれない。一眼というよりもコンパクトカメラの延長にあるカメラ、という印象だ。もちろん、小型軽量はこのカメラの主要コンセプトだから、小さすぎても欠点ではない。
背面のメニューボタンを押すと、

コンデジ風のアイコンが並んでいる。
昔のWindowsみたいな味気ないアイコンで、デザインも配置もセンスが感じられない。本来ソニーは持っただけでワクワクするものを作る会社の筈だが、ことユーザーインターフェイスに関しては世界のスタンダードに何十年も遅れている感じ。

セットアップメニューは、項目をひとつ設定し終えたらトップメニューに戻ってしまう。続けていくつもの項目を設定するときは、いちいちトップメニューから階層を下って選択し直さなければならない。
特に困るのはトップメニュー→カメラの項目。ひとつ設定すると次に撮影用ライブビューになってしまう。メニュー項目によって、設定完了後の次に表示される画面がまちまちで、操作を把握しにくく面倒だ。
操作性には大きく向上が求められる。

工業製品のデザインは、外観と操作性の両方が優れていなければならない。
という見地からすれば、デザインは「まあまあ」かな。

機能性

ファンクションボタンとCボタンに、初期設定以外の機能を割り振ることができて一見便利ではあるが、選択できる機能が少ない。これでは便利さも半減。
また、CボタンにISO変更機能を割り振れるのだが、すぐ右上のホイールでもISO変更はできるという、機能のバッティングもみられる。どのボタンにどの機能を配したら便利か、熟慮されていない。

「クイックナビ」が人気らしいが、視認性も操作性も改善が望まれる。
ぼくは表示オフにした。

強く望む要望としては、絞り優先オート露出時に、コントロールホイールを回すだけで露出補正できるようにしてほしい。現状は、ホイールを1度下に押してから回すという2度手間で作業効率が悪い。

モードダイヤルとコントロールダイヤルが2軸になったことで、ようやくカメラとして評価できる土台に登ることが出来た。

できれば、「おまかせオート」をメーカーおまかせでなく、自分おまかせに設定できればよかった。つまり、露出などの設定を保存できるC1・C2といったカスタムセッティング項目だ。

動画ボタンには動画撮影以外の機能を割り当てられない。
動画を撮影しない人がいるとは考えないのだろうか? 一等地のボタンは使われることもなく放っておかれる運命にある。

マニュアルフォーカス撮影で便利なピーキング機能は、期待していた以上に素晴らしい。絞り環のあるマニュアルフォーカスレンズ(ニコンAI-SやツァイスZFなど)を持っている人は是非使ってみよう。

携帯性

コンパクトなボディだから携帯性は大変良い。
レンズは10-18mm f4 ossしか着けていないが、このくらいのサイズのレンズが丁度よいバランスだと思う。

液晶モニタ

液晶モニタは綺麗で見やすい。
日中ピーカンでも、なんとなく構図決定できる程度にうっすらと見える。ただし、貼り付けた純正液晶保護シートが光を反射して、太陽との角度によっては全く何も見えなくなることがある。

スナップにしか使っていないからストロボ撮影時の見え方は分からないが、今のところ不満はない。現在の技術水準ではよいモニタだといえるのではないだろうか。

液晶モニタに表示される映像のクオリティはいいとして、その上に重ねて表示される文字やアイコンを完全にオフにすることができないのは残念。例えば、手ぶれ補正オンにすると、低速シャッター時に手ぶれ補正アイコンが点滅してわずらわしい。こういう余計な表示は構図決定の妨げになる。

それにしても、この種のアイコンって必要なのだろうか。初心者はこのアイコンが何を意味するのかまず分からないし、熟練者には当たり前すぎて不要だ。結局誰に向かって点滅しているのか分からないアイコンである。こういう余計な表示はやめてください、ソニーさん。

それから、絞りとシャッタースピードなどが、ライブビュー映像に重ねて表示されるのだが、これも映像画面の外に表示してほしい。重ねていうが、映像には一切の文字重ねないでほしい。構図決定の邪魔である。

電子ビューファインダー

電子ビューファインダー(EVF)のファインダー倍率は1.09倍で、マグニファイヤーを着けたニコンD7000とほぼ同じ。そして235.9万ドットの高い解像力によって巷での評価が高い。今あるEVFではおそらく最もよい見え方だと思う。
しかし、一眼レフのガラスペンタプリズムのクリアな見え方には遠く及ばない。

日中ピーカン時の風景の画像は、暗部が潰れて真っ黒だ。実際には写っている暗部でも真っ黒かそれに近い。どうしてなんだろう? 細い木の枝は解像が足りなくてざらざらと表示されるから、枯れ木が多い冬の風景写真だと画面全域がざらざらしていることもある。屋内では、暗部がノイズでざらざらする。

白壁などきめの細かいものにモアレがでる。なんか、ざらざらしていることが多い。
いまあるミラーレスではもっともよいEVFであっても、ファインダーを覗いたままカメラを横に振ると、やや残像が残る。左右に何度か振ると、滲んだ画像に少し酔ってくる。

先日パラグライディングをしたとき、事前注意として「空に浮かんだままファインダーを覗き続けると気分が悪くなって空中で吐く人がいるから、あまり長くファインダーを覗かないように」と言われた。ぼくはガラスペンタプリズムのニコン D7000を覗き続けてていたが、特に気分が悪くなることはなかった。しかし、もしこれが電子ファインダーのNEX-6だったら、気分が悪くなって本当に空中で吐いてしまったかもしれない。ちょっと怖いね。

よく、NEX-6のEVFは光学ファインダーと同等のクオリティだとネットに感想が書いてあるが、以上の点から、ぼくは同意できない。

ところで、EVFの見え方は、望遠レンズと広角レンズで大きく異なる。
理由はよく分からないが、広角レンズでは上記のような見え方をするEVFも、望遠レンズを着けてみると確かに映像がクリアに見えて、ボケも自然だしピントも来る。望遠レンズを使っている限りは使いやすいファインダーだといえる。

ぼくは10-18/4OSSしか使っていないから、EVFとは相性の悪いユーザーなんだと思う。

オートフォーカス

NEX-6のウリのひとつは高性能なハイブリッドAFだ。

贅沢にも、位相差検出方式とコントラスト検出方式のふたつのAF方式を併用しているのだ。しかし現時点で両方が機能するのはキットレンズ(とツァイス24mm)の2本だけ。昨年11月に発売したばかりの10-18/4OSSでも何故かコントラスト検出方式だけしか機能しない。何だかチグハグな印象だ。

ともあれ、ぼくが使うレンズは10-18/4OSSだけだが、明るい場所ならコントラスト検出方式だけで精度・速度ともに充分によい。

コントラスト検出方式は位相差検出方式よりもはるかに正確で、信頼できるから、撮影後にMacで写真をみていているときにピントチェックの必要を感じない。

D7000で撮影した写真は等倍表示にしてピントがきているかいちいち確認するが、NEX-6ならその手間が省ける(風景写真の場合ね)。
問題なのは、AF測距点の選択方法。すごく面倒だ。

まずFnボタンを押して、「フレキシブルスポット」モードをアクティブにする。次にソフトキーBを押してからコントロールホイールを上下左右に押せば測距点が移動する。移動したらソフトキーCを押して「OK」する。「OK」しなければ、AF測距点移動以外の設定(例えばISO変更とか)が出来ないからあわてる。

この方式だと、ボタンを操作している間に被写体がどこかへ消えてしまい、シャッターチャンスを逃してしまう。使い勝手がたいへんよくない。

この操作方法に納得がいかなかったからソニーの相談窓口に電話して訊いたら、「AF-Cにすれば被写体をフォーカスし続けるからシャッターチャンスを逃しません」とのことだった。

NEX-6が、ニコンD4と同等のAF性能で被写体を追随してくれるなら(つまり、どんな動体でもほぼ100%合焦しつづけられる性能なら)それでもいい。しかしそこまで期待できない。というわけで、AF測距点は真ん中固定で使うことにした。この方が確実だ。

コントラスト検出方式は、暗いところでのギブアップがやや早くてISO100・ss1/4・f5.6以下の光(EV7)あたりで一点測距から全面測距に切り替わる。
なお、顔認識の性能は結構優秀だ。

画面の端っこにいる人でもちゃんと認識する。

水準器

NEX-6には水準器が内蔵されている。
その精度はどうだろうか?

下の写真は、5円玉に結わえて天井からぶら下げた黒い糸。
完全に垂直が出ている糸を、エルグの雲台に載せたNEX-6できっちりと撮影した。

モニタの表示では2枚とも電子水準器表示が緑色になり、水平垂直がでていることを表していた。誤差はこれだけある。ニコンD7000の内蔵水準器よりずっと精度が甘く遊びが大きい。この精度で充分なユーザーがほとんどなのかもしれないが、ぼくには不十分。精度がもう少しでも高くならないものだろうか。

シャッター

電子先幕シャッターをオフにして、メカニカルシャッターにすると、シャッターショックが前幕と後幕の2回に渡って発生する。これってどうしてなのかな?。一眼レフよりショックが大きいじゃん、と初めは訳分かんなかったけど、よく考えたらNEX-6はライブビューのカメラだから普段は前幕が開いているんだね。

前幕が閉開して、それから後幕が閉じる。シャッターの動きが激しく、ショックはかなり大きい。何かヘンなので、電子先幕シャッターで撮影している。

電子シャッターのデメリットは、画面内を高速で移動する物体が条件によって歪んで写ること。

厳密に言えばメカニカルシャッターでもそうなんだけど、電子シャッターは歪みがハッキリと分かることがある。ぼくはNEX-6を風景写真用に使っているから、高速移動するものは撮らないためこのデメリットは関係ない。

バッテリー

昨日の撮影では、D7000で468枚撮ってバッテリ残量80%、
一方、NEX-6では374枚撮ってバッテリ残量2%だった。

驚くほどバッテリ持続力が違う。
どうやらNEXはピント合わせにかなり電力を使うようだ。
わずか99枚しか撮らないのに残り2%なんて日もあった。

その一方で、ピント位置固定で連写している分にはこれほど急激に消耗しなくて、約500コマ撮って残量約50%も残っている日もあった。

これまで一眼レフしか使っていなかったから知らなかったのだが、NEXに限らずミラーレスカメラはどれもこれもバッテリーの持ちが悪いらしい。それはコントラスト検出方式というミラーレスカメラが採用しているオートフォーカス方式の最大の問題点なのだそうだ。だからこれは仕様であって、改善の見込みは当分ない。

NEX-6に使うつもりで、Sundisk Extreamm Pro 32GB のSDカードを同時購入したのだが、長く持っても6GB撮影したところでバッテリがなくなるから必要がなかったかも。心構えとして、バッテリ1個で撮影できるのは300枚と想定している。NEX-6は予備バッテリは必須だ。

NEX-6は本体にUSB接続で簡単充電できるのがウリらしい。だからバッテリ充電器が付属していない。しかし、USB接続で満充電するにはなんと280分もかかる(公称値)。これは長すぎる。だからバッテリ充電器も購入した。充電器と予備バッテリと、合計で1万円かかった。

画質

ニコンD7000に採用されていると同じ、定評あるソニー製1600万画素の撮像素子だし、画質に関してぼくには問題がない。これよりよい画質を望むならニコンD4かD800を使うしかない。あるいはキヤノンEOS-1D Xとか。

それから、写真の画質は、撮像素子よりむしろレンズに依存する。よい画質を望むならよいレンズを使おう。

RAW

Capture one pro 7 か Lightroom 4で現像している。

レンズがよいこともあって、画質に不満はない。シャドウの階調はAPSとしては豊富でよい絵に仕上がる。
ただしどのソフトで現像してもD7000とは色の出方がずいぶん違う。スナップだから色が違っても問題はないんだけど、時には気になることがある。異なるメーカーのカメラを併用しているのだから仕方がない。この件はいずれ詳しく書きたい。

JPEG

ぼくはJPEGでは撮影しないから分からない。

RAWに含まれるJPEGプレビューを見ると、解像感重視なのかずいぶんシャープだと思う。ま、充分によい画質なのではないかい。

取扱説明書

簡単な説明しか付いていない。
アップル製品じゃないんだからもっと詳しく説明してほしい。
と思ったら、PDFファイルの詳しい説明書がCD-ROMに入っていた。最近のコンパクトカメラみたいだな。PDFファイルは読みにくいからあんまり好きじゃない。
それから、オンラインで製品登録をするために、ソニーのウェブサイトにアクセスして、専用アプリをダウンロードしてインストールしなければならないが、これも面倒な作業だ。

再生

ふたつあるダイヤルに、同じ機能しか振ることができない。

例えば、画像再生時に、コントロールダイヤルで写真を拡大、そのままコントールホイールで写真を順送りする、ということができない。どちらのダイヤルにも、写真の拡大縮小、または写真の順送り、いずれかの機能しかあてられない。これではダイヤルがふたつある意味がない。

とてもじゃないが操作性は洗練されていないよ、ソニーさん。

起動が遅い

仕様書によれば、起動時間は2.1秒。
ニコンD7000の0.15秒という、ほとんど瞬時の起動に慣れているぼくには、非常に長く感じる。実際にはもっと長いんじゃないかなあ?

2.1秒がどれくらい長い時間かというと、カメラを構えて、ファインダーを覗いて、しばらくの間は真っ暗な画面を見つめて、いつまでたっても何も映らないから「もしかして壊れたのかも」という不安がよぎる頃になってようやくファインダー像が映しだされる。それほど長い時間だ。短距離走者なら20mも移動出来る時間である。

このカメラで決定的瞬間を捉えるのは無理。そういうことはニコンの一眼レフカメラですることにしている。また、このカメラで10-18/4OSS以外のレンズを使うつもりがない理由の一つでもある。

SDカードが出し入れしにくい

コンパクト設計だから仕方ないかもしれないが、SDカード収納部が電池室蓋のつがい部分に近いから、取り出すときに気をつけてつまむ必要がある。毎日のことなので面倒だ。こういう、些細なことで神経を使わないような設計をしてほしい。例えば、SDカード収納部を電池の外側に配置すればよいのではないかな。

まとめ

NEX-6を単独で使っている時は、それなりによいカメラだから満足できる。風景を中心にしたスナップ写真を撮っている分には、キビキビ動く、軽くて大変よいカメラだと感じる。

しかし、Nikon D7000と併用すると、起動が遅いことや、こなれていない操作性が不満に感じるようになる。NEX-6は突然やってくる、一瞬だけのシャッターチャンスには対応できない。

一眼レフのような高い万能性を求めず、お散歩の軽量なスナップカメラ、あるいは風景写真専用機として考えるなら、NEX-6はよくできたカメラだ。だからぼくは今後も使い続ける。オリンパスやパナソニックなど、ミラーレスにはよいライバルがたくさんあるので、NEXシリーズの今後の発展に期待したい。

その上で気になるのは、NEX-7やNEX-5など、シリーズの他のカメラと操作方法に共通性が乏しいこと。おそらく家電メーカーのソニーには、シリーズで操作方法を統一するという発想がないのだろう。けれども、操作法の統一はフォトグラファーには重要なことだ。よく研究して、操作体系を練り上げてほしい。

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