インドでもっとも美しい夜明けは、聖河ガンジスに昇る。

ヴァラナシの夜明けは、インドでもっとも美しい夜明けではないだろうか。ぬるりとしたガンジス河の底から現れたように、ねっとりとした赤い太陽。これこそ、インドの夜明けだ。

3月下旬でもこの時刻なら涼しく、湿気を含んだ微風が肌に気持ちいい。
そんな、うっとりした気持ちで太陽を眺めていると、ガートの下方から何やら言い争いする声が聞こえてきた。見れば、サドゥー(行者)の方々だった。全身に灰を塗った男が、何やら憤っている。

原因がなんだか知らないが、本人には大切なことなのだろうけど、周囲の人はどうでもよさそうな顔をして見ている。

裸身に灰を塗るサドゥーは、仏教経典にも登場するから、何千年も前からこのスタイルでやっているのだ。この人達が野山を歩いていたら、お釈迦さまご在世の時代となんら変わらない姿だろうね。何しろ裸だからファッションセンスが不変だし。お釈迦さまも、しばらくは山林でいろんな修行をされていたから、もしかしたらこんな仲間もいらしたかもしれない。

その後、お釈迦さまは、行者さんたちのこういった姿には意味が無いと結論づけた。要するに、意味があることをしているようで、実は何もしていない、ということをご自分の修行体験をとおして悟られたそうだ。
つまらないことに執着して無駄な時間を過ごしている。

ああ、それって自分もそうだな。せっかく生まれてきたのだから、もっと有意義に過ごしたい。
と、聖河の上に昇る太陽を見て、思うのだった。