バレンシアの火祭り Fallas de Valencia

スペイン

2008年、ぼくは火祭りを撮るために、発売されたばかりのデジタル一眼レフ、ニコンD300を2台持ってバレンシアに5日間滞在した。今回はその時の体験記。

火祭りは、3月14日から19日までの5日間続く(日にちは毎年異なる)。
準備期間は2月から始まり、街のそこかしこの交差点に、巨大な張り子の人形が飾られる。市民の皆さんはこれらを見るため方々を歩き回る。人気投票で人気の順番が付けられるから、見る方も造る方も相当気合いが入っている。

バレンシアの火祭りというと、これら張り子の人形が注目されがちだが、道行く盛装の女性たちもまた魅力的だ。いや、本当はこちらの方がより魅力的かも。

スペインで最も美しい民族衣装

スペインで最も美しいと言われる民族衣装をまとった女性たち。
スペインというとフラメンコの衣装が連想されがちだが、あれはアンダルシア地方の衣装であり、ここバレンシア地方で来ている人は誰もいない。それにしても素敵な衣装で、こんなに華やかな女性たちが広い道いっぱいに歩いているのだから、毎年でもバレンシアに来てみたくなるよね。

火祭りのハイライトは、市庁舎広場に現れた巨大な張り子の人形。
市内各所に置かれた700以上の人形のなかでも、ここにあるのは最大のものだ。
最終日の19日深夜に、これに火が着けられる。
それまでの数日間、みんな、広場が炎に包まれる様子を想像して
ワクワクしながら見物して歩いている。

祭りの期間中は、市の中心部は終日車両通行止めだから、気ままに歩けるのだ。
日本でも、伝統的な祭りの期間中は、終日歩行者天国にして観客に楽しんでもらったらいいと思う。

もうひとつのハイライトは、カテドラル裏手の巨大なマリア像に献花する盛装の美女たち。祭りの期間中、カテドラルにいれば町中の美女たちが最高に美しい装いで集まってくる。ぼくとしてはこちらがメインイベントだ。

今も高性能なNikon D300

ファリャの期間中、ぼくは手に入れたばかりのNikon D300の高い性能を楽しみながらシャッターを切りまくっていた。D300のAFモジュールは、贅沢にもD3と共通のマルチCAM3500(DXに最適化されている)だから、その5年後に発売されたD600よりも全体的なAF精度は高い。マルチCAM3500は部品としては大きいからD600クラスのボディではスペースがなくて搭載できないのだ。カメラとしての精密度もD300の方がD600よりも遙かにしっかり造ってある。

祭りに感激し、D300に感動する、充実した日々であった。
適当なところできりあげて、ランチはパエリアを食べたり。
パエリアはもともとバレンシア地方の郷土料理だから、この街ではまさに本場の味を楽しめる。他の地方のようにしょっぱすぎることもなくて本場の味はおいしい。ぼくのお気に入りの店は、カテドラルからも近い エル ラル El Rall

木陰のテラス席が気持ちいい。
3月でも天気がいいと日中は暑いことも。
エル ラルの店長は、すらりとしたロングヘアのクリスティーナさん。
繊細で控えめな話し方をするステキな女性で、こんなに瑞々しく感じのいい人がスペインにもいるんだ。と感心したら実はアルゼンチン人だった。どうりでねえ(やっぱりねえ)。FaceBookの店のページにも写真が載っている。

店長の人柄は、店の雰囲気に如実に表れる。
この店の感じがいいのも、店長とスタッフの人柄によるものだろう。

夜になっても、賑わいは続く。
というか、スペインでは夜の方が盛りあがる。

市庁舎前の広場で、花火に火が着けられた。

ものすごく分厚い音の壁が、ドカンとぶつかってきた。
次の瞬間、突風と煙に包まれて、辺りが見えなくなる。
重火器の攻撃を受けたかのような衝撃で、さすが火祭りというだけある。
白昼の静寂を破るダイナミックな光景だ。
火を着けるのはBomberosの皆さん。

英語の Bombers (爆撃機) と似た綴りだからボーイングB29とか連想して、大空襲に出くわしたような感じだけれど、スペイン語では「消防隊」の意味だ。
今日は、火を着けるのも消すのも消防士の仕事。

上流階級のランチの様子を覗いてきた。
色とりどりの豪華衣装をまとった皆さんが、続々と車でやってくる。
美しい女性たちが集まって、それは言葉には表せないほど美しい光景であった(文章の手抜き)。
いや、ぼくはフォトグラファーなんだし、文章ではなく写真で表現しなくては。

スペインのランチタイムは午後3時から5時頃。
上流階級のランチは長いから、終わってしばらくすると夕方になる。
ポルタ デル マル広場で午後7時からパレードがあると聞いたので、行ってみた。集まってきた観客に混じって各国からの取材チームがいて、テレビ東京の撮影隊も来ていた。みんなでひたすら待っていると、やがて、松明など灯火を持った人たちが通り過ぎていった。

火を噴く巨大ゴキブリ?

荘厳ではあったが、短いパレードで、なんか物足りない。
「えーっ、これで終わり?」

しばらく待っていたが、どうやらこれで終わりかも。観客はみんな帰っていくし、隣のテレビ東京の撮影隊も、機材をまとめて帰っていった。けれども、ぼくらは釈然としないから、もうしばらく粘ってみることにした。
30分ほど経ったところで「シューッ」という音と共に、凄いのがやってきた。

火を噴く巨大ゴキブリ? 何だか分からないが火花と喧噪をまき散らしながら移動していく。

それを皮切りに、次々と、火を噴く悪魔、火を噴く道化師、そして踊るきれいな女の子たちがやってきた。いやあ、長いこと待った甲斐があった。幻想的なパレードに向かってバシバシシャッターを切った。それにしてもテレビ東京は、肝心なシーンを取り逃して残念だね。まあ、撮り逃したことも知らないから、気にしていないだろうけど、なんかテレビ東京らしいね。

花火もバンバン上がり始める。
昼間の、煙と音ばかり大きいのと違って、こちらは日本で見るような大輪の花火。たぶん、日本から花火師がやってきて火を着けているのだろう。
そして、夜は更けていく。

闇を焦がす炎

市のあちこちから火の手が上がり、
張り子の人形があっという間に燃えていく。

最終日の夜0時を過ぎると、いよいよ市庁舎前の大型人形にも火が着けられる。
瞬く間に大きな炎となり、突風が吹く。

こうして、バレンシアの火祭り" falla de valencia" は終わる。

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