何日も曇天が続くヒマラヤ 突然雲がきれて姿を現したチョモランマ

チベット

大本営の遊牧民のテントはストーブもあるし暖かくぐっすりと眠れた。
一夜明けて、外を見ればやはり曇っている。

テントからチラリと外を見て、そのままランドクルーザーに乗って大本営を去って行く人たちもいた。よほど時間がないか、あるいはラサからカトマンドゥへ向かう途中でここには立ち寄っただけのツーリストらしい。

フォトグラファーはすんなり帰るわけにはいかないが、といって曇り空ではすることがないんだよなあ。ねっから楽天的な晴れ男のぼくは都合よく晴れてくれるのを期待した。

しばらくしたら氷河をつつむ雲の一部が切れて、日溜まりが見えた。
ああ、あの雲の切れ間がもっと大きくなればチョモランマが姿を現す筈。この真っ白な雲がどこかへ消えてくれないか。

さらに待つこと1時間。

何日も曇天が続いているというのに、タイミングよく晴れてほしいというのは虫がよすぎるかなあ。頭の中では、晴れ渡る空の下で喜ぶ自分を想像したり、霧に包まれてあきらめて帰る自分を想像したり、いろんな自分を想像している。

10時を過ぎたころに突然雲が大きく動き、青空が見え始めた。

おおおお、これはもしかして……

おおお……

それからの10分間というもの、雲が消えては寄せ、太陽が見えては隠れ、風の動きで雲がどんどん動き、ついに白い壁が見え始めた。

巨大な姿を現したチョモランマ北壁。大きい。さすが8848m峰だ。
その場にいた誰もが感嘆して息を呑んだ。
すばらしい眺めだ。

みるみるうちに雲は完全に消え去り、チベットらしい蒼天になった。こころなしか空気もいっそうおいしく感じる。ああ、立ちはだかるあの山の向こうはネパールか。

世界最高峰は1時間のあいだ青空のなかにそそり立っていた。やがて雲が少しずつ現れ始め、再び白い雲の向こうに姿を消そうとしていた。

名残惜しく見つめるチョモランマ大本営の人々。大自然の恵みに感謝しながらぼくはシャッターをきり続けた。