Panasonic Lumix GX7 は、スナップカメラの最高峰だった

撮影機材

昨夏にパナソニックG6を買ったら、デザインばかりでなく操作性もなかなかよかったので、勢いで10月にGX7も買ってしまった。パナの事業部長が「最高のスナップカメラを目指した」と述べた記事を読んで期待が高まったのだ。

LUMIX DMC-GX7が正式名称らしいが、例によってDMCが何を意味するのか分からない。それはともかく、しばらく使ったのでここらでレビューをしてみよう。

デザインと操作性

外観はクラシカルな印象で好感が持てる。 けれどもフジのXシリーズほどのテイストはなく、スタイリッシュでもないし、といってやぼったいわけでもなく、使い勝手がよさそうだ。最高と言うからには、もっとデザインを練り上げてくれると嬉しいなあ。

グリップは、実用性から言えばもっと大きくしてほしかった。G6のグリップの形がよいため、G6を持った後にGX7を持ち替えるとしっくりこない。けれどもこの大きさと形がデザインコンセプトの一環であるのかもしれないし、スナップでよく使う短い焦点距離のレンズなら問題ない。

前後に設けられたダイヤルで、シャッタースピードと絞りを別々に操作できるから気持ちがいい。G6はダイヤルが1つしかないから、シャッターと絞りが兼用で操作がもたついた。

GX7は絞り優先オート露出時に、前ダイヤルが絞り、後ダイヤルが露出補正になる。カメラはこうでなければいけない。

大変よいのは、背面にファンクションボタンがF1〜F4まで、4つ設けられ、それぞれに自分が選んだ機能を割り当てられること。「1ボタン1機能の法則」がよく踏まえられている。この法則から守らないカメラは使いにくいから、買ってもそのうち使わなくなってしまう。パナソニックの設計者は、富士フイルム・ソニー・オリンパスなどミラーレス各社よりもカメラのことがよく分かっているようだ。ミラーレスで一番操作性がよいメーカーはパナソニックだろう

しかしながら、液晶モニタに表示される5つの疑似ボタンは、いちいちタップして表示させなければ押せないから使いにくい。このあたりにまだ「実際には使えない役に立たない新機能」を搭載したがる家電設計者の心癖を感じる。 簡単にまとめると、デザインはかなりよく、価格を考えるとたいへん良いが、ここまでできるなら更に作り込んでくれれば尚良い、といったところ。

EVFが優れている

EVFの見え方は、2014年初頭のパナソニックのカメラでは一番よい。 ソニーNEX-6に比べても、映像がなめらかで遙かに見やすい。 実際のデータに比較的忠実で階調も分かる。パナソニックのEVFはソニーに及ばないとブログに書いたのはまだ1年前のことだけど、GX7はあっさりNEX-6を追い越し、引き離してしまった。それにしてもデジタル環境の進歩の早さには驚かされる。

この調子で進歩すると、あと数年したら、ガラスペンタプリズムのファインダーより電子ビューファインダーの方が見え方がよくなるかもしれない。高級一眼レフともかく、D7100クラスに肩を並べられる日がやってくるかも。

ファインダー倍率は1.39倍(135換算0.7倍)で、もう少し大きいといいのだが、フルサイズ一眼レフでもこれが標準的なサイズだから、こんなものだろう。

難点は、アスペクト比を16:6→3:2→4:3と設定するごとに画面が小さくなること。縦の長さは常に一定で、横の長さが変わる仕組みだから仕方が無いのかもしれないが、画像が大きくて一番見やすいのが16:6のときというのはいかがなものか。次の3:2でもまあ見やすいEVFだが、4:3に設定したら画面が一番小さくなってやや見にくくなる。これは釈然としない。 実質的に、これではファインダー倍率1.39倍とはいえないのではないだろうか

各フォーマットごとのファインダー倍率を明記してほしいものだ。

上から覗けるファインダーが特にイイ

さて、GX7の特徴は、上に跳ね上がられるビューファインダー。

これのお陰で目を下を向けてファインダーを覗ける。

まるで中型カメラを使っているみたい。この体制は姿勢が楽で、落ち着いて画像を見つめられる。特に、人物撮影のときに中腰にならなくて済むから撮影が格段に楽になった(横位置撮影時に限る)。店舗撮影にも使いやすい。 日中屋外で、背面液晶モニタが見えない時でも、このファインダーのお陰で気持ちよく撮影できる。このファインダーを使いたくて本機を買ったと言っても過言ではないかも。

しかし、ファインダーを覗いてから、像が写し出されるまでの時間が長い。 スリープからの復帰もニコンの一眼レフよりずっと長い。お陰でシャッターチャンスを逃したことが何度かあった。

スナップ撮影は居合抜きのようなものだ。見た瞬間に撮るのだから、スリープからの復帰に時間を要するようでは最高のスナップ撮影機とはいえない。ましてや液晶モニタに「スリープ解除」なんて表示しているようではかったるくて撮影意欲が萎える。スリープから瞬時に復帰できるようにしてほしい。

せっかく買ったアイカップは、歩いている間にどこかへ落ちてしまった。 落ちないように工夫がほしい。

タッチパッドAFが使いやすいかも

GX7で素晴らしいのは、AF測距点をタッチパネルで選べること。 カスタム設定のタッチ設定で、タッチパネルをON、タッチパッドAFを相対位置に設定してみよう。 するとEVFファインダーを覗いたまま、液晶モニタ上を右手親指でドラッグすれば、AF測距点を自由に移動させられる。

設定は「絶対位置」よりも「相対位置」の方が、操作しやすい。 従来の一眼レフでは考えられないほど簡単にAF測距点を指定できる。素晴らしい!と絶賛したいところだが、ひとつ難点が。

それは、この方式はEVFファインダーを右目で覗く人には優れた機能だが、ぼくのように左目で覗く人は、液晶モニタにあたった鼻に反応して知らないうちに勝手にAF測距点が移動してしまう。お陰でピントを外したことがあった。 だからといって、即座にAF測距点を自分で移動しようとしてもできない。というかやりにくい。このカメラはそういう仕様みたい。EVFファインダーを左目で覗きながら操作するよい方法はないか、いろいろと試したのだが、見つからなかった。

<2014.5.1追記> 結局、タッチパッドAFをオフにした。 ぼくは左目でファインダーを覗くので、鼻がモニタにあたって知らぬ間に測距点が移動して、ピントが画面端に合焦するなど失敗が少なくなかった。もしかしたらタッチパネルの性能が敏感すぎるのかもしれない。 EVFファインダーを右目で覗く人なら使いやすい機能だろう。たぶん。

ピント精度が高いコントラストAF

ミラーレスカメラのよい点は、コントラスト検出方式のAFだ。

ピント精度は非常に高く、信頼できる。 手元にあるM4/3のレンズのうち、40mm/1.7を開放で撮影してもまずピントを外さない。特にパナソニックのAFは暗所での合焦性能にも定評がある。EV-4でも合焦する性能は卓越していて、ソニーやフジフイルムのカメラではピントが合わない暗所でもすんなり合焦する性能はさすが。

広角〜標準レンズまでなら、AFの使い勝手はもしかしたらニコンの一眼レフよりいいかもしれない。

しかし望遠レンズや動体撮影においては、レンズのハンドリングのしやすさや、AF測距点の設定しやすさからいって一眼レフには及ばない。プロのスポーツカメラマンがミラーレスカメラで仕事の撮影することは当分ないだろうね。しかし、ぼくのようなヒトが何かのついでにミラーレスカメラでスポーツを撮影することはあるかも。

顔認識AFが便利なシチュエーション

人物撮影の速写性向上のため、顔認識AFにすごく期待した。 しかし、顔認識AFは、他のカメラでもそうだと思うが、横向きの人よりも正面を向いている人に合焦しやすい。 つまり、画面内に人物が2人以上いるときに誰にピンを合わせるかはカメラの判断次第。結果的に脇役に合焦し、主役がアウト オブ フォーカスなことが多々あった。

顔認識AFは、人物が一人しかいない場面では高い威力を発揮する。 また二人以上が横一列に並んでいる場面でも効果が高い。

しかし、二人以上が前後に距離を置いて立っているシチュエーションでは、合わせたい人に合わないケースがある。ぼくが誰にピントを合わせたいかをカメラが分かるわけがないから仕方がないとは思っているけどさ。

これを解決するには、顔認識AFとスポットAFを状況に応じて”即座に”切り替えられればいいんだけども、なぜかそうはなっていない。設計者が人が前後に並ぶシチュエーションまで想定していないことがわかる。

それから、顔認識AF時は被写体の顔で露出をとり、色白に写るように露出を設定してくれる。半段オーバーくらいかな。日本人の女の子を撮影するときは有難い機能だ。ただし相手がアフリカ人やインド人でも色白に写るから、そういうときは単なる露出オーバーな写真になってしまう。「顔認識・黒人モード」がほしいなあ。

格段に進歩した撮像素子

撮像素子はパナソニック自前の製品。 2013年になって急に性能があがったらしくダイナミックレンジが大きく拡大した。 信頼すべきDxOMarkのテストによれば、GX7の総合成績は70点をマークしている。

この数値はキヤノン EOS 70Dの総合成績68点よりも2点高い。

もはやマイクロフォーサーズの画質はキヤノンのAPS一眼レフを凌駕している。ニコンD7100の高い成績(総合成績83点)には及ばないものの、キヤノンでは達成できない70点の大台にのっているのだから気持ちよく使えるといってよいのではないだろうか。

しかしながら暗部のノイズ性能はそれほど向上していないようだ。昨今のカメラは夜景で2〜3分露光してもそれほど長時間ノイズが増えないが、GX7は8秒以上の露光からノイズがかなり目立つようになる。設定で「長秒ノイズ除去」をONにすれば減るが、それではディティールも消えてしまうからONにしたくない。

ぼくはスナップ撮影なら高感度ノイズがほとんど気にならないたちだが、三脚を使っての夜景撮影はやっぱり低ノイズであってほしい。そういったウィークポイントはあるものの、本来の使い方、つまり手持ちスナップ用カメラとするならGX7は不満のない高性能な撮像素子を積んでいるといえる。

バッテリ

純正バッテリはDMW-BLG10という型番。 パナソニックは新型カメラを発売するごとに新型電池を採用しているから、同時に充電器も新しくなる。ぼくの場合、G6とGX7が別の電池なので、充電器も2台海外に持っていかなければならない。同じようなカメラなのになぜ電池が何種類もあるのか、理解できない。

見方によっては、役所の認証作業などに莫大な時間と費用がかかる新電池を採用するのはパナソニックの真面目さの現れともいえるが、ユーザーサイドからいえば、電池はできる限り共用できるようにしてほしい。

先日の撮影では、 純正電池DMW-BLG10で327枚、 ROWA の互換電池で226枚撮影できた。 アマゾンでの純正電池の価格は1個5600円、 互換電池の価格は1個1100円だから、互換電池は充分なプライスバリューがあるといえる。ぼくは評判のよいROWAの電池をアマゾンで2個買った。

電池には1〜3まで番号を振って、充電順序を決めている。 追記:純正電池が海外で安く売っているようだ。いくつか電池を買ったのでリポートした

GX7はスナップ向きのカメラなのか

GX7は、メーカーによれば最強のスナップ向きのカメラということであったが、Sony NEX-6より早いとはいえスリープからの復帰に時間を要すから、シャッターを押すまでに被写体がいなくなってしまうことがある。最強のスナップカメラと言うにはまだまだ実力が伴わない。

カメラの設計者は自分で路上スナップをバンバンしているのだろうか。 率直に言ってGX7はNikon D7100の速写性・瞬発力には及ばない。 それでもあえてGX7を買ったのは、比較的小型なカメラであり、電子シャッターを採用したことで無音撮影ができること。シャッター音がはばかられる場所は多いから、シャッター音がしないというだけで大きなアドバンテージになる。

メカニカルシャッター(後幕のみ)と電子シャッターとは設定で選択できる。 なお、電子シャッターにはデメリットがある。 こちらのブログ記事でレポートしたのでご参照下さい。

露出の常時プレビュー

露出がマニュアルモードの時に、デフォルトではライブビューに露出が反映されていないが、カスタムの「常時プレビュー(Mモード)」をONにすれば反映できる。

画質は優れているのか

ぼくはふだんRAWで撮影してCapture one で現像している。 カメラがニコンであれソニーであれ、カメラのJPEG画質を気にしたことがないからパナソニックの絵作りはよく分からない。 たまにJPEG撮影をしたり、写真閲覧ソフトPhoto Mechanicのプレビューを見て感じるのは、すっきりした誰にもで好まれる絵作りをしていること。

それからデフォルトのシャープネスが強すぎること。標準に設定しているとカチカチの「コンデジ画質」になってしまうから、それを避けるためにシャープネスを−3に設定してる。

優れたセンサーのお陰で高画質

撮像素子の項で書いたように、センサーの総合成績はキヤノンのAPS一眼レフよりも高いから、RAWデータの素材としての力は申し分ない。GX7に満足できない人はペンタックス645Dを買うしかないかもね。

それから画質にこだわる人は、RAWで撮影してPhotoshopなりCapture oneなりで現像すればよいだろう。これら現像ソフトには、カメラで設定したシャープネスなどは反映されないから、自分の納得いく絵作りが出来るはずだ。

問題点

LUMIXの最大の問題点は、LUMIXというブランド名が格好悪いことだね。

パナソニックは、プロカメラマンにも使ってもらうつもりでGH3やGX7を開発しているそうだが、1万円で売っているコンパクトカメラと同じ名前のカメラをクライアントの前で堂々と使う度胸のあるカメラマンは少ないだろう。

そのせいか、先日、ヨドバシカメラ新宿西口カメラ館に行ったら何と!、2階のカメラ売り場からパナソニックのカメラが消えていた。店員にさりげなく理由を聞いたところ、パナのカメラはお客に写真撮影機ではなく動画撮影機と受けとめられているので1階に移りました、と歯切れ悪く答えていた(8月1日追記:今も西口カメラ館2階にパナのカメラはない。もうここには戻ってこないかも)。

それから、カメラ専門の修理を受け付けるサービスセンターがないこともマイナス要因だ。ふだんは冷蔵庫や掃除機の修理を受けているサービスセンターのおばさんに相談しても話がかみ合わない。

(追記:東京秋葉原に、カメラとPC専門のサービスセンターが設けられていた。しかしプロサービスがないのはイタイ)。 (追記2:その後、2017年からプロサービスが開始された)

もっとも、Nikonプロサービスの窓口の人々も、カメラやレンズの相談をしてもちんぷんかんぷんなことが多いから、実体は似たようなモノだけどね。Nikonは銀座NPSよりも新宿の一般SSの窓口の人の方が機材に詳しいし親切だ。NPSは窓口の人もカメラの勉強をしてほしい。ユーザーから見ると不思議なことだけど、そこには大企業なりの理屈があるんだろうね。

使っていて気になる点は、EVF/LCD自動切り替えなのはいいとして、日中、LCDを見ている時に自分の影でセンサーが勘違いしてEVFに勝手に切り替わってしまうこと。これは本当にイラつく。LCDパネルを上げているときはLCDを見ているに決まっているんだから、自動切り替えは自動でオフになるようにしてほしい。

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まとめ

GX7は気軽なスナップ撮影によいカメラだと思う。 ソニーNEX-6よりもキビキビしているし、操作性もこちらのほうが遙かによい。もうNEX-6は使う気にはなれないので手放した。そして、GX7をもう一台購入して、2台体制でスナップ撮影に出かけている。

「最高のスナップ機」とは、完全無欠の理想のスナップ機という意味ではなく、「現時時点でのミラーレスにおける最高のスナップ機」とするなら、そのとおり、GX7は最高のカメラだ。

メーカーのショールームやカメラ量販店で、フジ、オリンパス、ソニーのカメラをさんざんいじったが、どれもこれも操作性に難がある。ミラーレスでテキパキと撮影するなら現時点ではパナソニックが群を抜いて扱いやすい。パナのカメラ設計者は、他のメーカーの人よりも自分で撮影することが多いのだと思う。

NEX6を買っても交換レンズを揃える気持ちが起きなかったが、GX7購入以降はだんだんM4/3のレンズが増えていく。一昨年までは迷走していた感のあるパナソニックだが、いよいよ本気を出してきたことがGX7から感じられる。今年はこのカメラでバンバンとスナップを撮っていきたい。

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